【名古屋市名東区】ウクライナの平和を願って!名東高校の生徒さんによるウクライナ避難民支援団体「MCU」さんにお話を伺いました

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名東高校MCUの皆さん

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻からもうすぐ丸3年になります。絶え間ない攻撃から逃れ、日本にもウクライナから多数の方が避難されました。2025年1月31日時点で、日本には2,747人のウクライナ避難民の方がおり、愛知県には121人(2025年2月1日時点)、そして名古屋市には85人いらっしゃるそうです(2025年1月19日時点)。

そんな名古屋市のウクライナ避難民の方々を支援する、高校生による団体があります。名古屋市立名東高等学校の生徒さん3人による、「MCU(Meito Connect Ukraine)」という団体です。
今回は名東高校に出向き、「MCU」の小林さん、阪本さん、関さんにお話を伺いました。

「MCU(Meito Connect Ukraine)」とは?

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名古屋市立名東高等学校

名古屋市立名東高等学校には「普通科」と「国際英語科」という二つの学科があり、「MCU」の皆さんは「国際英語科」の2年生です。

「国際英語科」には「ワールドスタディーズ」という国際理解のための学習活動があります。世界で起こっている様々な問題解決に貢献できるようになるための基本的な力、つまり、世界の情勢、各国の文化や歴史など、国際人として必要な「教養」を身につけることを目標としているそうです。
そして実際の場面でのコミュニケーションツールとして、思いのままに英語を使いこなせる力を付けるのがもう一つの目標だそうです。

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「ワールドスタディーズ」では生徒それぞれが興味のあるテーマを掘り下げていき、1年生の時は主に教室での学び、そして2年生になると校外での「フィールドワーク」を開始します。他の生徒さんたちが「ジェンダー平等」「フェアトレード」「地元の伝統文化」などのテーマを選択する中、小林さん、阪本さん、関さんは「戦争」を選び、「MCU」としての活動を開始したそうです。

小林さんと関さんは1年生の時からウクライナの戦争について学んでいたそうですが、2年生になった頃にはガザ地区の戦争が激化、大きなメディアではウクライナ情勢についての報道が少なくなっていたことに危機感を覚えたそうです。そこで阪本さんとともに、まだ続いているウクライナの戦争を風化させず、避難民の方を支援したいという思いから「MCU」としての活動を開始したそうです。

MCUのこれまでの活動

「つどいの場」

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つどいの場にて(MCU様ご提供)

名古屋市ではウクライナ避難民の方々のための様々な支援活動をしています。避難民の方々の不安を少しでも減らすことができるよう、母国語で話し合える「つどいの場」を運営しています。こちらでは支援情報の提供や名古屋文化の体験などを実施しているそうです。「MCU」の皆さんもウクライナの歴史についての講演会に参加し、避難民の方々との交流が始まったそうです。実際に避難民の方にインタビューし、生の声を聞くことができたそうです。

また名古屋市では市民の皆様とウクライナ避難民の方を支援でつなぐマッチングを行っていて、この事業を委託されているNPO法人「レスキューストックヤード」は「MCU」の活動をサポートしてくださっているそうです。東区泉にある「レスキューストックヤード」は災害の被災者支援団体ですが、ウクライナ避難民の方々に洋服や靴、日用品、食品といったものを無償提供しているそうです。避難民の方々の就労や学校入学手続きのお手伝いもされているそうです。

「ターニャさんへのインタビュー」

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ターニャさんと(MCU様ご提供)

名古屋市はウクライナ避難民であるターニャさんを市の職員として採用しています。ターニャさんはウクライナ避難民支援事業や多文化共生推進事業などに従事しているそうで、ウクライナ避難民の顔としてメディアにも出ていらっしゃるそうです。「MCU」の皆さんもターニャさんにお会いして、避難された経緯や現地の情報についてインタビューをしたそうです。

ターニャさんはウクライナのオデーサから名古屋に避難されたそうです。名古屋市職員としてのターニャさんの主なお仕事は、市役所と国際センターでウクライナ避難民の方々とコミュニケーションを取って相談に乗ったり、日本と名古屋市での生活に関する公式情報を提供することだそうです。ウクライナ文化を紹介するイベントの準備や開催にも携わっているそうです。

名古屋の人たちはとても親切で、静かで安全な生活を送る事ができ感謝しているそうです。しかし、侵攻開始時から避難民の数は増えているのに、支援の量があまり変わらないのが気がかりだそうです。

「韓国の姉妹校での意見交換」

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韓国 城南外国語高校にて(MCU様ご提供)

名東高校の国際英語科では、2年生になると韓国へ修学旅行に行き、姉妹校の「城南外国語高校」の生徒さんと英語を使って交流するそうです。「国際語」としての英語を実践的に使う機会だそうです。 この交流会でMCUの皆さんはこれまでの活動について話し、とても良い経験をされたそうです。

「ウクライナ街頭募金活動」

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MCU様ご提供

2024年12月26日、MCUの皆さんは藤が丘駅前でウクライナの現地の方への支援のための街頭募金活動をしたそうです。この募金活動はNPO団体の「チェルノブイリ救援・中部」の協力で行われ、合計で54,991円も集まったそうです。このお金は「チェルノブイリ救援・中部」さんを通してウクライナ支援のために寄付されたそうです。

「テーブルでつなぐウクライナ」@ ウクライナ料理レストラン「ジート」

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「テーブルでつなぐウクライナ」チラシ

2025年1月19日、MCUの皆さんは名古屋駅近くにあるウクライナ料理レストラン「ジート」で「テーブルでつなぐウクライナ」というイベントを開催しました。ウクライナ料理を楽しみながら、ウクライナの方と日本の方が語り合う交流会です。定員25名を大きく上回る応募があったそうで、大成功だったそうです。「ジート」はウクライナ避難民の方々が運営するレストランです。

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ウクライナ料理レストラン「ジート」(MCU様ご提供)

ウクライナ料理レストラン「ジート」は、名古屋駅から地下街直結の「ウインクあいち」地下1階にあります。「ジート(Жито)」とはウクライナ語で「麦」のことです。ウクライナ国旗の下半分の黄色は、ウクライナを象徴する麦畑を表しています(上半分の青は空を表す。黄色はヒマワリを意味するという説もあり)。

ウクライナ料理レストラン「ジート」はこちら↓

「ジート」はウクライナ避難民の雇用と日本でのウクライナ文化の普及のために、NPO団体「日本ウクライナ文化協会」がクラウドファンディングで資金を募り、2024年5月15日にオープンしました。ウクライナ避難民の方々が交流できる、ネットワークの拠点としての役割も果たしています。

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「ジート」ランチメニュー(MCU様ご提供)

MCUの皆さんによると、「ジート」のランチメニューはウクライナ起源のボルシチとメインのウクライナ料理をいただくことができておすすめだそうです。とても美味しいそうです。

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ランチメニュー(MCU様ご提供)

水餃子のようなものは「ヴァレーニキ」というウクライナ名物です。こちらの中身はジャガイモだそうですが、他にもザワークラウトやキノコ、チーズなどいろいろあるそうです。肉入りのクレープは「ベンデーリキ」というものです。ウクライナの方が作る本場のお料理は、とても優しいお味だそうです。

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MCU様ご提供

右側の料理は「シューバ」というサラダです。型に詰められてケーキのような見た目ですね。「ジート」さんのお料理は全て手作り、無添加だそうです。野菜たっぷりでヘルシー。「在ウクライナ日本国大使館」のサイトにウクライナ料理についてのページがあります。

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MCU様ご提供

「スィルニキ」というウクライナのデザートです。カッテージチーズのパンケーキだそうです。「ジート」ではこのような珍しいお料理がいろいろいただけます。ウクライナのお酒や紅茶などもいただけるそうです。MCUの皆さんによると、「ジート」ではウクライナの方々がとても生き生きと働いていらっしゃったのが印象的だったそうです。

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MCU様ご提供

テーブルでつなぐウクライナ」では「MCU」の皆さんによる発表(プレゼンテーション)、質疑応答などの後、ウクライナ料理を楽しみながら語らうひとときが設けられました。

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MCU様ご提供

イベント当日の特別メニューです。美味しそう! このイベントにはジート以外の避難民の方も参加されたそうですが、久しぶりに食べるボルシチにホッとされたそうです。ボルシチはウクライナではお味噌汁のような存在ですが、日本ではビーツなどの材料を揃えるのが難しく、なかなか普段は作ることができなかったそうです。日本食や日本語に慣れない生活の中、故郷の味に心から癒されたそうです。

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MCU様ご提供

イベントに参加された皆さんで記念撮影! このような交流会は相互理解が深まり、とてもいい試みですね。

ウクライナ避難民の方々が困っていること

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「ジート」ではウクライナ避難民の方が作った伝統模様の手芸品や、絵画などが販売されています。募金をするとブレスレットプレゼント!(MCU様ご提供)

実際にウクライナ避難民の方々と交流してみて、どのようなことが見えてきたのかMCUの皆さんにお聞きしました。

日本に避難されている方々は子どもから高齢の方まで幅広い年齢層だそうで、名古屋市には日本のウクライナ避難民の最高齢の方がいらっしゃるそうです。一番困っているのは「言葉の壁」だそうです。ウクライナはIT先進国であり、若い方は英語ができる方も多いそうですが、やはり高齢の方は英語は分からない方が多いそうです。日本の街には英語や中国語、韓国語などの表記は多いと思いますが、ウクライナ語はほぼないので英語が分からないと本当に困ると思います。

そして言葉が分からないので、名古屋市の公共交通機関の使い方も分からなくて困っているそうです。複雑な地下鉄の乗り換えやバスの路線などは難しいと思います。人に聞きたくても言葉が通じません。これだと外出も億劫になってしまいますね。こうした苦労があるので、語学学校に通っている方もいらっしゃるそうです。

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ジートでのチェルノブイリホステージ基金事務局長ドンチェヴァ・イェフゲーニャさんの歓迎会にて(MCU様ご提供)

避難民の方々は日本は好きだと言ってくださっていて、名古屋ではとても良くしてもらっていて感謝していらっしゃるそうです。でもやはり故郷に帰って現地に残してきた家族に会いたい気持ちが強いそうです。
避難民の方々はウクライナに誇りを持っていらっしゃる方が多く、辛いときにはウクライナの国歌を歌って自分を元気づけるそうです。ウクライナ国歌(「ウクライナは滅びず」というタイトルで知られています)には「みんなで頑張ろう」という、強い愛国心が込められているそうです。
(ここでは権利関係上リンクは貼れませんが、是非YouTubeで「ウクライナ国歌」で検索してみてください。現在のような辛い時期のために書かれたのかと思うような歌詞です。)

ウクライナの方々との交流で変わったこと

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藤が丘でのウクライナ街頭募金活動(MCU様ご提供)

「MCU」として活動を始めると、ご家族や周囲の人たちもウクライナのことに興味・関心を持ってくれて、いろいろ調べたり「こんなニュースがあったよ」と教えてくれたりするようになったそうです。

実際にウクライナ避難民の方々と交流するようになると、ニュースで見ていた時よりも「自分事」として感じるようになり、リアリティを持つようになったそうです。やはり実在の顔と名前の分かる個人として避難民の方と会うと、「知り合いの人」となるので現実感は遥かに違うと思います。

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ウクライナの方から贈られた麦(ジート)のブローチ

上で触れた、日本での最高齢の避難民の方から、感謝の印としてMCUの皆さんに麦(ジート)のブローチが贈られたそうです。その女性はいつも会うとハグをしてくれるそうで、MCUの皆さんは「この活動をしていて本当によかった!」と感じるそうです。

■MCUの皆さんが一番伝えたいこと

この活動で、MCUの皆さんが伝えたいのは、「戦争を風化させない」ということだそうです。戦争も長期化すると慣れてしまいますが、現地ではずっと激戦が続いています。
ですので「関心を持つ」こと、「助け合いの精神」を大切にしたいそうです。
世界秩序が不安定な現在、戦争は他人事ではありません。自分事として考えていきたいですね。

MCUの皆さんは、「ウクライナと日本の架け橋」になり、ウクライナのことをもっと知ってもらいたいそうです。

また、違う言語を話す人同士でも、英語を使って意思疎通ができることを身をもって体験し、事実上世界の共通語である英語を学んでいて本当に良かった、と感じたそうです。

「募金と絵画でつなぐウクライナ」

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「募金と絵画でつなぐウクライナ」(MCU様ご提供)

MCU主催の「募金と絵画でつなぐウクライナ」という、ウクライナの子どもたちの描いた絵の展示会が名東高校で開かれています。また2月10日と12日は校内で募金活動が行われました。

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MCU様ご提供

こちらの子どもたちの絵画は、「チェルノブイリ救援・中部」がウクライナの子供たちから贈られたものだそうです。家が燃えていたり爆撃されたりしている絵があって、MCUの皆さんはショックを受けたそうです。戦争が子どもたちの心にどんな影響を与えているのかは、絵を見れば一目で分かります。「チェルノブイリ救援・中部」はウクライナの子供たちとクリスマスカードを送り合ったりして交流を続けているそうです。

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MCU様ご提供

MCUの活動は、この「募金と絵画でつなぐウクライナ」で最後だそうです。残念ですが、これから3年生になり、一旦受験勉強に集中です。

将来の進路を伺ったところ、小林さんと阪本さんは国際貢献ができるような仕事に就きたいそうです。そもそもそのために名東高校に入学したそうです。関さんはメディア関連の仕事に就きたいそうです。国際問題などの報道でも、名東高校で学んだことはとても役に立つことでしょう! 皆さん将来のことを早くから見据えていて、とても頼もしいです。

志望の大学は皆さん散り散りになってしまうのでMCUとしての活動はできませんが、大学でもこのような活動を続けて行ってくださいね! そして平和が訪れたら、ウクライナにも行ってみてくださいね!

不安な世の中ですが、しっかりとした意見を持った高校生の皆さんの存在に、希望の光を見ることができました。学校の校風もあるのでしょう。とても素敵な皆さんでした♪

*MCUの小林さん、阪本さん、関さん、名東高校の先生方、取材にご協力いただき本当にありがとうございました!

名古屋市立名東高等学校はこちら↓

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